忍者ブログ

機械仕掛けのトマト

何かあったら、書いてます。いろんなことが織り混ざっているので、何でもこい!な方はどうぞ。
更新は、遅いかも。

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2024/04/26(Fri)09:53

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忍者さんには、頭が上がらない。

2020/03/15(Sun)17:01

お久しぶりです。
いつだってお久しぶりなんですけども、お久しぶりです。(何度も言うでない)

急に動き出したかと思えば止まり、そして、実は裏で別の活動めっちゃしていたりする。
そんな私です。(え)

前回の日記から、まだずっとツイッター企画を続けておりますよ!
今回は、比較的長くちゃんとやれていて、個人的にはよくやってるななどと…。

さて、そんなことよりも、この私が長年HPを作らせてもらっている忍者さんから、最近メール通知がきておりまして、「おや、何事かいな?」と思ってみてみたところ、なんと、いくつかのサービスを終了するとのことでした。
一瞬、冷や汗を流したものの、どうやらこのHPやブログの部分は、なくなるサービスではないらしく、ホッと一安心です。
それにしても、様々なサービスが時と共に廃れていく中で、忍者さんは未だにちゃんと運営していらっしゃって、その上、必要性の低いサービスを終了させると共に、残ったサービスにより一層力を入れてくださるとのことで、なんというかその……こんなに、更新頻度に波がある謎のHPを存続させて頂けて、大変に有難いと思うばかりです。

こんなことを言うと、自分も歳をとってしまったなと感じるのですが、個人HP全盛期も過ぎゆき、今は誰もが相互コミュニケーションを前提とした簡易Webサイトのようなもの(つまりはSNS)を持てるようになったことで、こういった場所はどんどん日の目を見なくなるし、ネットショップのような形態でない限り、「何のためにあるの?」といったものになっていくのでしょうが、私は何かがあった時、自分が何かしたくなった時の発信拠点として、今後もここを活用させてもらう所存です˘˘

なので、もしもこのHPを何気なく、さり気なく、眺めているような奇特な方がいらっしゃった場合には、今後とも何卒よろしくお願いします。

…急に、最終回みたいなことを語り出しておりますが、そういうセンチメンタルなことは、残念ながら1mmもないので(笑)、安心して覗きに来てやってくださいね。

ではでは、またHPの更新は一体いつできるのやらと思いながら、忍者さんに感謝して今後も続けていきたいと思います。
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No.534|出来事Comment(0)Trackback

お絵かきしてます

2019/08/12(Mon)23:17

前回の日記で、頑張ってる感をめっちゃ出しておいて、結局、また更新止まってるやんけ!
って思われている方しかいないと思うのですが、最近、また、企画ものにハマって、そっちばかり更新しているという体たらくです。すみません(土下座)

それと合わせて、最近、またイラスト練習したい病が再発いたしまして、毎度、再発する度に「向かねぇ!!」って投げだしている私ですが、今、結構真剣に、毎日何かしらお絵かきしてます。
一応、罪滅ぼし的にご報告すると、このサイトの「PICT」にも貼っているInstagramにほぼ毎日、イラストをアップするというお絵かき修行中なので、ある意味「PICT」は更新してますよ!!というとんでもない開き直り宣言だけさせていただきますね。(こら)

最近、元々の彩瀬というHNと企画用に使用しているジョゼというHNがごっちゃになってて、ややこしいなと感じてきたのですが、今更、統合するのも如何なものかという感じなので、しばらくはこのまま並行させていただきますが、リンクも…色々考えながら、どっちも貼ってしまうか…。
(もしも、混乱している方がいたらあれなんですが、彩瀬=ジョゼです)

それぞれの投稿先から、このサイトに辿り着く方自体が珍しいと思うのですが、ややこしいことには違いない。

最近は、お絵かき優先しているので、小説書きとか、ゲームしたりっていう時間を取らずに本当に黙々と作業しているのですが、たまには息抜きに他のこともしなければなと思う今日この頃。(他にすることといえば、マンガの新刊読むことくらいか?)

しかし、このサイトは地味ぃに存続していきますので、万が一にも見てくださっているような奇特な方がいらっしゃいましたら、今後ともよろしくお願いします。

などと、そろりと近況報告でした。(大丈夫だ。私は生きている)

No.533|出来事Comment(0)Trackback

最近どうしたの彩瀬さん

2019/02/21(Thu)00:09

自分でも驚くほど頻繁に更新していて、恐い。
どうも、彩瀬です。

いや、本当に、最近どうしたのってくらい頻度高めに更新している今日この頃なんですけども。
実は、今年はどうにか久しぶりにしっかり創作活動していきたいなって思ったりなんだりしているので、年明けからこう、謎のやる気を出しているところなんですが。(なんなの急に)

うちの看板キャラクターの要くんのシリーズ短編小説とか、書き始めたら、意外と止まらなくなりまして。
頑張って更新してます。
もちろん、「Garden」も、冊子化計画をこそこそと進めていたりするので、なんか、今年の私やる気だなあと。(やる気スイッチ、押すと決めたら全力だby彩瀬)

また、何かのタイミングでスイッチ切れたら申し訳ないです。(え)
でも、ここまでサイトも消さずに頑張ってこれているので、このまま頑張っていけると・・・・いいね。(まるで他人事のようだ)

というわけで、今年は謎のやる気を見せているので、遠巻きに見守ってもらえると嬉しいです。(あんまり近づいちゃダメなんだぜぃ)

No.532|出来事Comment(0)Trackback

『Garden』 -第二章:青と白の国②-

2019/02/05(Tue)00:20

リリスは、目の前を泳ぐようにたなびくローブの動きを見ていた。
それはスローモーションで視界の端へと流れていき、襲いかかってきた青年の手の中にあったナイフが地面に突き刺さる、ザクッという音を聞いたことで、漸く魔法が解けたようになって、視界の中の世界が時間を取り戻す。

「ぐっ・・!///」
青年は、後ろに尻餅をついた。

「まったく・・・武器も持たない女性に対して刃物を振り回すなんて、物騒だなぁ。」

どこか飄々とした声でそういったローブの男の手には、片手剣が握られていた。それは、ローブの裾で手元の部分が隠れていたが、磨かれた剣先からして、張りぼてや安物などではなく、本物の刀剣であることが分かる。そして、瞬間ながら寸でのところで相手のナイフの切っ先を狙い弾き飛ばしたその手腕からして、明らかにその扱いに慣れている者のそれだった。
「くそっ!なんだ、てめぇっ!!」
「おや、人に名を聞くときは、自分から名乗るのが礼儀じゃないか?まぁ、盗人に名乗る名なんてないけどね。」
リリスは、あまりの展開にただ呆然と成り行きを見ていることしかできない。すると、今まで背中しか見せていなかった男は、不意に振り返り、ふぁさりと流れるような動作で被っていたフード部分を開けた。
途端に、輝くばかりの金糸が開けられたフードの裾からこぼれ落ちる。中央で二つに分けられた長い前髪に、低い位置で一つにまとめられた、こちらも背中まで掛かる長さの後ろ髪。垂れ目がちなエメラルドグリーンの瞳が親しげにリリスに向けられた。
リリスは、いつか読んだことのある童話の世界に描かれたエルフという森の妖精の姿を思い起こす。
「お嬢さん、お怪我はありませんか?」
実に優雅な騎士を思わせる動作は、いかにも普段からそうすることに慣れているように見えた。手を差し伸べられて、「は、はい。」と返しながら思わずそのまま自分の手を差し出しそうになったところで、リリスはハッとしてそれを引っ込める。出しかけた手を、もう片方の手で自身の胸の前にギュッと強く抱き締めるようにした。
瞬間、先ほどの自分の行動がフラッシュバックのように頭の中に明滅する。

(私は・・・あの時、何を・・・・・・)

それを考えた瞬間、胸の奥底から指先にかけて、一度は収まったはずの恐怖が再び湧き上がり、急激な震えが彼女の身体を包んだ。
突然、顔色が悪くなったリリスの姿に、ローブの男は差し出していた手を引き、案じる視線で「・・・君、大丈夫かい?」と声を掛けるが、今のリリスにはその声が聞こえていないようだった。

そして、男は次の瞬間、右手に持った片手剣をぐるりと背後へ薙ぎ払う様にして、身体ごと振り仰ぐ。
「ひっ・・!!」
そこには、先ほどの盗みを働いた青年がおり、まさに立ち上がって、どこかへ逃げ出そうとしているところだった。剣の切っ先は、青年の喉元数ミリの位置で止まっている。
「こら。君は、そこから動いちゃダメだろ?これから、この区画の警備に引き渡さなきゃいけないんだから。」
リリスからは見えなかったが、ローブの男は恐ろしいほど綺麗な微笑みを青年に向けていた。顔立ちが整った人物の冷笑ほど恐ろしいものはない。
青年は、微動だにすることもできずに冷や汗を流していた。




その頃アデルは、リリスを追って小道を右へ左へ駆け抜けていた。
周囲の店や人に、リリスが駆けていったであろう方向を聞きながら後を追うが、如何せん、スタートが遅かったので、追いつけるはずもなく、時間が経てば経つほど、二人の道行きを知っている人物はその場からいなくなっていく。
5度目くらいの聞き込みで、路地裏に居合わせたバーの主人に「さあ、そんな子が来たっけかなあ?」と返されたところで、それ以上進めなくなってしまった。
(くそっ、・・・やはり、広すぎる・・・・!)
一旦、足を止めて呼吸を整えながら、引き返して警備に尋ねる方が早いかと考えるが、事件現場である本屋でつい今しがたまで聞き込みを行っていたところから推測するに、それほど早くに事が進展しているとも思えない。とはいえ、この区切られた狭い区画の中、この空間の警備に長けた者たちであるという点では、頼るべきであるともいえる。
アデルは、盗人が捕まるかどうかよりも、リリスが途中で巻かれて盗人を見失ってしまっていることを願った。
(そうであれば、怪我をすることもない・・・)
それが、希望的観測であるということに気づきながら、気を取り直して、一先ず大通りへと引き返すことにした。このまま、複雑に折れ曲がった道の先へ宛もなく進んだところで、運良くリリスと出くわす可能性は低い。

日の当たらない路地裏を大通りへ引き返す方向に歩を進めようとすると、先程、ゴミ出しのために出てきていた開店前のバーの主人が、「あぁ、あんた。」と不意にアデルを呼び止めた。店の裏手にある見落としてしまいそうなほど小さな勝手口から顔を出している。
「あんた、さっき盗人を追っていった女の子を探してるって言ってただろ?」
「あぁ、そうだが・・・」
「今、丁度酒を納品に来た業者が言っていたんだがね。向こうで、その盗人が捕まったみたいだよ。」
「!!」

アデルは主人からその場所を聞くと、簡単に礼を言って盗人が捕まったという場所を目指した。




「はい、おまちどうさま。」
カウンター席の内側から、店主がそう声を掛けながら、カップ&ソーサーを置く。
リリスは、目の前に置かれた細かい柄の入ったティーカップを見つめた。それは、自分が普段使っているようなカップよりも、全体的に少し小さめの造りをしており、分かりやすい花や果物の絵ではなく、目の細かい幾何学模様が陶器の白地の上に青い線で描かれていた。
そっと両手で熱を確かめるようにして顔の前まで持ち上げると、ふんわりとミントの香りが鼻をくすぐる。
「・・・ミントティー。」
「お店のおすすめって書いてあったから、適当に頼んでみたけれど、もしも口に合わないようだったらすぐ変えてもらうから、遠慮なく言ってくれて構わないよ。」
「あ、いえ。ミントティー大好きです。ありがとうございます。」
そう答えて、リリスはペコリと小さく頭を下げた。

青年を警備の人間に引き渡した後、ローブの男はリリスをお茶に誘った。傍から状況だけ見ると、まるでナンパ師のようだが、急に具合の悪そうな様子を見せたリリスのことを心配して誘ってくれたのだということが分かったので、リリスはその誘いを無下に断ることはしなかった。実際、自分自身もどうしたらよいのか分からないくらい動揺していたし、どこかで一度、腰を落ち着かせる必要があると感じていた。

ローブの男は、最初の印象と違わず女性の扱いに慣れているようで、そんなリリスを労わるように、優しく声を掛けながら近場の喫茶店まで彼女を案内してくれた。
ここへ来るまでの間、男は終始、当たり障りのない話題を振ってくれていて、それは彼女の不安を少しでも和らげようと思ってのことだったのだが、喫茶店に入ってカウンター席に腰かけ、注文したミントティーが目の前に出てくるまで、実のところ、リリスの耳には男の言葉のうち3分の1も頭に入ってきてはいなかった。

ミントティーにそっと口をつける。
ミントのさわやかさが鼻を抜けて、喉の奥に吸い込まれるように温かな液体が流れ込んできた。自分が知っているミントティーよりも、少し舌の上に砂糖の甘さが残る。
椅子に腰かけたことで気持ちが落ち着いてきたのか、隣りに座る男の輪郭がゆっくりとリリスの頭の中に読み込まれていく。まるで絵本の挿絵に描かれた人物のようだ。あまりにも整った顔立ちなので、おそらくは、普段から何もしなくても自然と周りに女性が集まるような人なのだろう。と、腹の底にじんわりと染みてきたミントティーのおかげなのか、少し余裕が戻った頭の片隅で、そんなことを考えながら、ゆっくりと息をついた。
そこにきてようやく、リリスは自分がとても失礼なことをしてしまっているということに気が付いて、パッと顔を上げる。
「あのっ、色々とすみません。先ほども、危ないところを助けていただいて、本を盗ってしまった方もちゃんと、警備の方に・・・・しかも、飲み物まで、こんな・・っ!」
今まで静かだったのが嘘のように、一気にしゃべり出したリリスに、同じカウンター席の右隣りに腰かけていた男は、目をパチクリと瞬かせた。次の瞬間、フッと小さく息を漏らすように笑いを零すと、「いやあ、元気になったみたいでよかった。」といって笑った。
「あの、私ご迷惑をおかけして、ごめんなさっ・・・!」
言いかけたリリスの口先にスッと人差し指を掲げて、男は言葉を遮る。
「“すみません”も“ごめんなさい”もいらないよ。全部、こちらが好きでやったことだからね。だから、ここで使っていい言葉は一つだけだ。」
自分の口の前に立てられた一本の指先を見つめてから、リリスはまた男へ視線を戻す。急にしゃべり出してしまったので、呼吸を整えるのにほんの数秒、時間が必要だった。息を整えて、5度目くらいの息継ぎで、ようやく言葉を吐き出す。
「・・・・ありがとう、ございました・・。」
「正解。」
男は満足そうにそう返すと、リリスの前に立てていた指を手元に引き戻して、自分も目の前のミントティーに口をつけた。
「んー、やっぱりこの国のお茶は、甘くて俺の口には合わないなぁ。」などと、自分で頼んでおきながら、苦笑いをこぼす。カウンターの内側でコップを拭いていた店主がぴくりと片眉を上げて男を一瞥すると、男は気まずそうに肩をすくめて見せた。

「あの・・・」
「ん?」
おずおずとリリスが口を開くと、男は、これ幸いとばかりに店主の視線を逃れてリリスの方へ顔を向けた。
「えっと、あなたは・・・」
「あぁ、すまない。まだ名乗っていなかった。俺の名前は、ルイス。ルイス・ベンジャミン。よろしく。」
「は、はい。こちらこそ、申し遅れました。私は、リリス・ブラウンです。リリスと呼んでください。えっと、それで・・・ベンジャミンさんは、旅の方、ですよね?」
「俺のことも、ルイスでいいよ。・・・まぁ、そうだね。住んでいるところは、ハイドランジアでもネリネでもないから、旅人って表現であっているかな。・・・どうして?」
問われて、リリスはこくりと唾を飲み込み、怖々とした様子で声を発した。
「あの、私、実は他国へ入るのは初めてで・・・もっと言うと、生まれ育った町から離れたこともなかったので、ちょっとびっくりしてしまって・・・。今回みたいなことは、外ではよくあることなのでしょうか・・・。」
ネリネは、特別豊かな国ではない。しかし、その代わりに大きな貧富の差もない国だった。特にリリスが長く暮らしていた都心を外れた田舎町などでは、昔ながらの互助会のような人と人との繋がりが自然とあり、リリスをはじめ、身寄りのない子供でもなんとか一人前の大人になれる環境がそこにはあった。他国に一歩足を踏み入れた途端、先程のような事件に遭遇してしまった。もしかすると、外の世界は自分が思っているよりも、困窮している人が大勢いるのかもしれない。とリリスは重い想像を膨らませる。
そんなリリスの瞳が困惑の色で揺れるのを見て、ルイスと名乗った旅人は彼女が何を思ってそう自分に聞いたのか正しく理解したらしく、彼女の不安を取り除くように優しく微笑んでみせた。
「なるほど。他国へ出てきて、早速こんなことに巻き込まれたことは災難だ。でも、今君が心配しているような理由ではないから、安心したらいい。少なくとも、今回のことに関して言えばね。」
「?」
リリスの顔に疑問符が浮かんでいるのを見て、ルイスは「んー、簡単に説明するとね。」と言って、人差し指を一本立てて話し始めた。
「リリスちゃんが、どこまでハイドランジアのことを知っているのか分からないけれど、実は、ハイドランジアは現在、内政がちょっとごたごたしていてね。検閲が厳しい状況にあるんだ。」
「!そういえば、通常、ここを通過する審査には1ヶ月掛かると聞きました。」
「そう。人もそうだけど、1番大きいのは物資の方だね。ハイドランジア国内で生産されたあらゆるものに対する検閲が厳しくなっていて、今まで国外に流通していた物の半数以上は国外への流通が禁止されている。限られた流通を許可されているものも、関税がかなり高額になっているんだ。だから、ハイドランジア産の物資は、市場で急激に希少価値が高くなっていてね。密輸業者が後を絶たない。併せて、昨今、この国境線に一番近い無国籍地帯での盗難被害が増えているっていう事情がある。」
「そうなのですね・・・すみません。私が知識不足で。」
リリスは、両手で握りしめていたカップをソーサーの上に戻して、ほうと息を吐いた。自身の無知を恥じる様にじっと手元に目線を落とす。そんなリリスを気遣うように、ルイスは明るい声で返した。
「気にすることはない。ハイドランジアの内政の急激な変化に関しては、本当にここ最近のことで、そのために俺も・・・あ、いやそれは君には関係のないことだな。」
「?」
リリスは、不自然に切り上げられた言葉の続きを伺うように視線を向けるが、相手はその視線をにっこりと整った顔面に見合った美しい笑顔で躱した。喫茶店でお茶を飲むという和やかな行為ですっかり忘れていたが、助けられた時にも感じていた只者ではない雰囲気がルイスからやんわりと漂う。
(この人は、一体、何者なんだろう・・・)
今更のようにそんな疑問が頭の片隅に浮かぶが、話し掛けやすい気安さを纏いながら、聞いたところで、その笑顔のまま容易く躱されてしまいそうな気配を感じて、リリスは迷いながら、言葉を探した。
「そういえば、ルイスさんはどちらまで行かれるのですか?旅の途中なんですよね?」
「あぁ、俺は旅の途中というか、ここには連れを迎えに来て立ち寄ったような形なんだ。そろそろ到着しても良い頃なんだが、何かトラブルでもあったのか、なかなか姿を現さなくて困っているところでね。もしも、ダークグレーの髪と瞳の難しい顔をした美人を見掛けたら教えてもらえると助かるよ。」
「そうだったのですか・・・。あ!それなら、検問近くにある窓口に行って聞いてみると良いかもしれません。私たちも、ここで人を探していて、丁度、先ほど呼び出しを掛けてもらったところで・・・・」
そこまで口にしてから、リリスは良いことを思いついたと胸の前に両手を合わせたポーズのまま固まった。瞬間的に、これまでの出来事が映写機を逆送り再生するかのようにキュルキュルと頭の中に映し出されて、それはリリスが本屋へ入る前にまで遡っていき、「はぐれない様にだけ、気をつけてくれ。」といったアデルの顔のシーンでぴたりと止まる。途端に、リリスの顔色がさっと青くなった。それはまるで、「触ってはいけません。」と口酸っぱく親に注意されていた大切な置物に手を伸ばして割ってしまってから、どうしようかと慌てる子供のようで、いや、まさにその通りの状況だったのだから、笑おうにも笑えない。
ここまで、時間にしてほんの1秒にも満たない間だったのだが、その変化は誰の目にも明らかで、隣りに座っているルイスが「どうかしたのかい?」とミントティーを傾けながら声を掛けると、殆どその語尾に被るようにして、ガタッと大きな音を立てながら、リリスは慌ててカウンター席から立ち上がった。
「そうでした!大変です!私、ここへ一緒に来た方に何も告げずにさっきの人を追いかけてきてしまって・・・!」
「おや、それは・・・・連れの人は相当心配しているんじゃないかい?」
「心配するのを通り越して、呆れられているかもしれません・・・。とにかく、元の場所に戻らないと・・・っ!あ、すみません!お会計を・・!」
荷物の用意をしながら慌てて財布を取り出そうとしたリリスの手元を、スッと大きな手が遮る。
「!」
「レディをお茶に誘っておいて、支払わせるような無粋な男と思われるのは侵害だな。」と、ルイスは実に自然な動作で金額を店主に差し出した。つくづく女性の扱いに長けていると思われるその所作は、その所作に見合う整った顔立ちに浮かべられた微笑みとセットで行われていて、そこには有無を言わせない何かがあった。先の一連のやりとりも手伝って、リリスは一言「あ、りがとうございます・・・。」と返す以外の選択肢を見つけられずに、そっと取り出した財布をリュックの中にしまう。
見ると、ルイスもすでに同じように席を立っており、リリスが店の出口へと歩き出すと、さも当然という顔で、自分も連れ立って歩き出した。
「さて、また変なことに巻き込まれるとも限らないから、元の場所まで送らせてもらうよ。ネリネ側の検問近くでいいのかな?」
最早、確認ではなく決定事項として告げられたそれは、リリスに疑問や断りの言葉を挟む余地を与えない。戻りの道が分からない状況ではあったので、有難い申し出には違いなく、リリスも、それに対して何も言わなかった。心の中で、「この人はどうやら、相当世話焼きな性格なのだろう」と顔面偏差値平均点以上の男に対して抱くにしてはとてもお粗末な感想を持ってはいたが。
「はい。わざわざ、お気遣いいただきありがとうございます。」

喫茶店から外へ出ると、そこは大通りに面した店で、リリスはいつの間にか自分が検問から伸びていたメインストリートまで戻って来ていたことに気付く。盗みを働いた青年を追いかけていった先は、確か細い入り組んだ路地奥の方であったことを思い返すと、どうやら自分は、ずいぶんと長いこと、ぼんやりとした状態でこのルイスという男に引きずられるようにしてこの店まで連れてこられたのだと思った。ここまで歩いてきた記憶があまりにもおぼろげだ。
「この通りなら、覚えがあります。このまま真っすぐ行けば、検問に辿り着けますよね?」
そう言って、背後のルイスを振り仰いだのと、リリスの腰高辺りに軽い衝撃が走ったのはほぼ同時で。
「え、わっ!?」
音としては、トスッという軽い音に過ぎなかった。
何事かと衝撃のあった部分に視線を下げると、すぐ後ろへ走り去っていく小さな後ろ頭が目に入る。茫然とその方向を目で追うリリスのよろける身体を、すぐ後ろにいたルイスが支えた。
「大丈夫かい?」
声を掛けると、すぐにルイスも背後へ走り去った少年の背を見つめた。そして、険しい顔で静かに、しかし素早くリリスに尋ねる。
「リリスちゃん、何かなくなったものはないかい?」
「え、・・・」
「いいから、その辺りに入れていたものをすぐに調べて。」
ルイスの言葉に漂う不穏な空気に、急に心拍が上がる。慌てて腰の辺りを探ったところで、リリスは自身に一体何が起こったのか理解した。
「!身分証が、・・・・私の身分証がありません・・っ!」
「リリスちゃん、さっきの子を追うよ!!」
リリスが探っている間も少年の行く先をずっと見ていたのであろう、ルイスはすぐに駆け出した。リリスも、続いて後を追う。




「あぁ、本を盗んだって奴なら、確かに今しがた、ここに連れてこられたよ。」
アデルは、盗人が捕まったという場所に一番近い警備の詰め所へ訪れていた。
窓口の男は、警備隊の一員とは思えないふくふくとした輪郭の頬を揺らして、顔に合わない小さなサイズのメガネの下からアデルを見上げる。
「その時、赤茶色の髪の少女が来ませんでしたか?」
「赤茶色?いや、盗人を連れて来たのは、ずいぶんと顔の整った男だったけど・・・赤茶ではなかったかな。」
「男?」
「そうそう。ここらじゃなかなか見ないくらい整った顔だったから、びっくりしたよ。あれは、国外の人間に間違いないね。いかにも、“旅人”って格好だったから。」
窓口の男は、手元に置いた紅茶を飲みながら、昼休憩のおしゃべりでも楽しむかのように話す。とても勤務中の態度には思えず、アデルはあからさまに嫌そうな顔を向けたのだが、相手の方は全く意に介していない様子だ。
「ありがとう。勤務中にすまなかった。」
これ以上話を聞いても無駄だと判断して、窓口を離れる。半分くらいは嫌味のつもりで言ったのだが、「どういたしましてー。」と呑気な返答に、頭を抱えたくなった。
(困った。警備に引き渡したのがリリスじゃないとすると、これ以上探しようがない。あとは、入口の検問まで戻ってみるしかないか・・・・。)
盗人を引き渡しに来た顔の整った男というのも気になるが、人を尋ね歩くには情報量が少ない。もう一度だけ、窓口に戻って男の特徴を聞こうかと、アデルが振り返った時だ。

「だから、茶髪の女にしつこく追いかけ回されて、無理矢理振り切ろうとしたら、金髪の綺麗な顔したおっかない男が、突然横から入ってきたんだよ!」

(!)
詰め所の奥から、若い男の訴えるような声が外まで聞こえてきた。
アデルは思わず足を止めて、その声に耳を傾ける。
「ぎゃーぎゃー喚くな!・・・・金髪だかなんだかしらねぇが、こんな簡単に捕まっちまうなんざ、てめぇの腕が落ちたんだよ。」
訴える声よりもあきらかに落ち着きがあり、しゃがれた響きの中にどこかドスのきいた音が混じった声が返す。
「女一人だったら、俺一人だって、簡単に振り切れたんだよ!」
「ぬかせっ!その前に、追いつかれて壁際まで追い詰められてんじゃあ、いずれにせよ同じじゃねぇか。」
そっと、詰め所の奥へ視線を向けると、檻状の拘留場所に入れられた青年と、その檻の外のすぐ傍らで、背のない木椅子に腰かけた男が話をしていた。アデルからは骨の浮いた線の細い背中しか見えないが、叱責している声は、檻の外に腰かけている男の方で間違いない。
(捕まっている方が、本を盗んだ奴か・・・・)
会話の内容からして、檻の外にいる方も善人という訳ではないだろう。あからさまに、同じ盗人グループの人間と思われるにも関わらず、警備の者は誰もその男を気に掛ける様子はなく、あののんびりとした窓口の男も、相変わらず楽しそうに新聞片手に紅茶を飲んでいる。
(他国の情勢に口を挟むつもりはないが・・・・この国の警備はどうなっているんだ。)
奥にいる2人に気づかれない程度に、剣呑な視線を送ってみるが、もちろん、窓口の男がその視線に気づくことはない。
「とにかく、あの野郎はとんでもなく強かったんだ!あれは、きっと他国の諜報員に違いねぇ!捕まえて吐かせれば、あっちの方が困るに決まってる!!」
「ああ、ああ、てめぇの言い分は分かった。そっちは、もう他の奴らに行かせてる。お前を追い詰めた茶髪の女ってのも一緒だったみてぇだから、まとめて痛い目見させられるだろうよ。いいからお前は、早いとこそっから出られるように、オヤジへの言い分を考えとくんだな。」
檻の外に座っていた男は、それだけ言うと木椅子から立ち上がり、ゆっくりと詰め所の出口へ向かう。
「おう、あんたにも世話かけたな。あとで別の奴が迎えに来るだろうが、また頼むぜ。」
「はいはい。ご苦労さんでーす。」
窓口の男と親しげに声を掛け合い、外へ出てきた。

「ったく、捕まるなんざ面倒かけやがっ・・・て・・・・っ!?」
「動くな。」
低く、怒りを押し殺した声色が詰め所から出てきた男の耳朶を震わせた。
アデルは、左手で細身の男の腕を掴み、相手の背中に押し付けるように固定した格好で、右手で背後から男の首根っこをがっちりと掴む。
「騒ぐな。騒ぐと、お前の左腕が曲がらなくていい方向に曲がることになる。」
「・・・へへっ、兄ちゃん誰かと人違いしてるんじゃねぇか?おれぁ、あんたに迷惑かけた覚えはねぇけどな。」
へらへらとした喋り方をする男の首を掴み上げた腕にぎしりっと力が加わった。
「今拘留所に入っている男を連れてきた奴を、誰かに追わせているんだろう。どうする気だ。」
「・・・あんた、あの野郎の知り合いか?それとも、一緒にいたっていう女の方か?いずれにしても、下手なことはしない方が身のためだぜ。」
男は急に声を落として、自分の状況には見合わない脅すような言葉を吐き出す。アデルはその物言いに違和感を覚えた。
「・・・・盗人集団の割に、随分と警備隊と仲がいいんだな。」
「それが分かってんなら、尚更、話は早い。兄ちゃんも頭が良いなら分かるだろ?俺らと事を構えるのは、よくねぇってことがさ。」
「追わせている2人はどこだ?場所を答えろ。」
「おいおいおいおい、だぁから、さっきから言ってんだろ?俺らを敵に回さない方が、身のためだってな・・・っ!!」
男は不意に、固定されていない右手の袖から小さなナイフを抜き出し、背後のアデルへ切りかかろうとした。が、左腕の固定と、首背面を掴み上げたアデルの手の力は強く、ピクリとも身体が回らない。ナイフを手にした右手が、中途半端にアデルの脇腹の横で止まる。その膂力の大きさに、ここにきて男は自分の背後にいる人物がその辺にいる一般市民ではなく、なんらかの訓練を受けた人間であることに気づく。背後からの気配が、急激に冷え込むのを肌に感じて、それに反するように自身の背に冷たい汗が流れていくのを感じていた。
「・・いやっ、今のは、ほら、ちょっとした挨拶みたいなもんで、・・・兄ちゃんがあんまり怖い声出すもんだから、びびっちゃったっていうかさ、・・・だから、そのっ・・・」
「俺は、忠告したぞ。」
「へっ?・・っつ、!!!???あ、がはぁっつ!!!!!?????」
ごとり。いや、ごきりというのか、鈍い音が男の身体の中を通って内側から鼓膜を震わせる。
押さえ込まれていた左腕の肩部分が、熱の塊みたいに熱くなって、そこから先の感覚が鈍くなる。脳が自分の身体の変化を認識した瞬間、膝が故障でもしたみたいに笑い出し、男は力なくその場に膝を着いた。
「な、な、お、お、折れ・・っ!!!???」
「安心しろ。関節を外しただけだ。・・・もう一度聞く。2人はどこだ?」
アデルは男の関節に軽くひねるような力を加えながら、初めと変わらない口調で尋ねる。地面に塞ぎ込んだ体制の男に合わせるように自身も膝を折って、相手にだけ聞こえる声の大きさで話しかけており、周囲から見たら、気分が悪くなった人間を介抱してやっているようにしか見えない。
痛みと混乱で、抵抗という言葉が完全に頭の中から消失してしまった男は、震えるままに声を絞り出した。
「お、大通りを西へ折れた先の路地裏に・・・っ」
「もっと詳しく。」
「や、宿屋と時計屋の間を入ったところだ・・・っ!!」
「助かった。協力感謝する。」
「ひっ、いぎあっ・・・!!!!」
またしても、ごとりという鈍い音と痛みが身体の内側を巡り、男は肩から指先までの感覚が繋がって、じんじんと痛みが登ってくるのを感じていた。それは、外した関節を元に戻した音だったのだが、あまりのことに自身の身に起こったことに頭がついていっていないのか、アデルが腕を離しても、男は地面に伏して震えるまま立ち上がれずにいた。
(少し、脅しすぎたか・・・・)
心の中で反省しつつ、素早くその場を去ろうと立ち上がる。

「・・・・王家の差し金か・・・ナタリア様の、刺客なのか・・っ」

震える声はあまりにも小さく、傍にいたアデルの耳が辛うじて拾えるくらいの大きさだった。
「・・・何か勘違いしているようだが、俺は誰かの命でお前を襲ったわけではない。」
アデルの声が届いているのか、震える男はブツブツと小さく呟くばかりで、最早、アデルの方を見てはいなかった。
(とにかく、早くリリスとその顔の綺麗な男とやらを追わなくては・・・・)
先程から再三話に上がってくる“顔の綺麗な男”というのに、何やら嫌な予感を感じとりつつ、アデルは警備詰め所を後にした。




「なんか、こんなことじゃないかとは、思ってたんだけどねぇ。」

ルイスは、相変わらず軽い口調で、自分たちの現状を言葉にする。
リリスの身分証を盗っていった少年を追って、大通りから右に折れた路地裏に入ったところで、2人は見るからに柄の悪そうな男達に囲まれていた。
彼らの指示でリリスから盗みを働いたのであろう少年は、男たちの中の一人に盗った物を手渡すと、小さな銀貨を受け取って、その奥へと走り去っていってしまった。
路地の奥から進み出てきた目元に傷跡のある顔の男が、少年から受け取ったリリスの身分証を眺めながらしゃべり出す。
「たまにいるんだよなぁ、お兄さんたちみたいな正義感の強い旅行客ってやつがさぁ。よその国のことにいちいち口を挟んでくるのが趣味だとでも言うみたいに。ま、でも、今回はいい教訓になったでしょ?関係のないことには首を突っ込むなっていう。」
言いながら、ひらひらと身分証を振る。
「その話から察するに、さっき俺が警備に突き出した盗人の仲間・・・ってところかな?」
手元の刀剣に手を添えながら、ルイスはざっと辺りを見渡し、相手側の人数をカウントしていた。
(8人ね・・・・)
背後にリリスを庇いつつ、8人を相手にどこまで立ち回れるかと計算するが、相手側も馬鹿ではないらしく、長物である刀剣を持ったこちらが立ち回りにくい路地裏に誘い込んできていることを考えると、無闇矢鱈に剣を抜くのも得策ではなさそうだ。
「わ、私の身分証を返してください・・っ!」
悪い事態に陥っていることを感じつつ、リリスもまだ声を発する気力は残っている。でなければ、男8人に囲まれた状況で、自身の主張を声に出すことは叶わないだろう。目元に傷のある男は、人数に武があるからか、ルイスが剣に手を掛けていることも気にすることなく、余裕の表情で身分証をひらりひらりと振り続ける。
「こいつを見たところ、そっちのお嬢さんは本当にお人好しの一般市民みたいだが、金髪のあんたは、一体何者だ?この無国籍地帯に入るのに刀剣の携帯まで許されてる。・・・まさか、抜刀までは許可されてないよな?となると、さっきこちらの仲間を捕らえるときにその剣を抜いてたことがバレると、あんたもヤバイんじゃないのか?」
男の言葉に、リリスもハッとしてルイスの顔色を伺うが、ルイスは表情を崩さないまま返した。
「・・・・それはどうかな?もう一度、試してみるかい?」
柄に掛けた手は離さない。
リリスは、やはりこの人物もなんらか特殊な理由を持った人物なのだと思ったが、この場でそれを尋ねる余裕はなかった。
(どうしよう・・・私が一緒についてきてしまったから、ルイスさんも戦い辛い状況に・・・)
ぐるりと視線を巡らせるが、見事に退路を塞がれており、自分一人でもここを突破して逃げ出すのは厳しいように感じた。
「まぁた、自分が迷惑かけてるって思ってる?」
「!」
突然掛けられた言葉に顔を向けると、ルイスは周囲の男達の方へ警戒の視線を向けたまま、口元だけにっこりと笑んでいた。
「言っておくけど、こうなる可能性も考えた上で、リリスちゃんについてくるように指示したんだ。どうせ、こちらが二手に分かれたら分かれたで、向こうも二手に分かれるつもりだっただろうし。そうなると、それこそ相手の思う壺だからね。」
そんなことまで考えていたとは思わず、リリスは改めて目の前の男が只者ではないと感じていた。とはいえ、ルイスもこの状況の打開策を探しているのか、口調や表情には出さないまでも、相手の出方を伺いながら、剣の柄にかかった手に力が入っているのが分かった。
剣の腕が立つのだとしても、狭い空間で人一人を守りながら戦うのがどれほど難易度の高いことなのかくらいは、リリスにも想像がついた。
顔に傷のある男が両隣に立つ他の仲間に視線を送ると、周囲を囲む男たちはじりじりと2人を囲む円を狭めてくる。
(左右に1人ずつ。前3人。後ろ3人。どこからくる?)
柄を握る手に更に力が入り、刃の部分が鞘から3cm程度見えた。その光に反応して、正面に立ちはだかる男たちが瞬時に地面を蹴って、前へと素早く進み出る。ルイスもついに覚悟を決めて、剣を抜き去ろうとした時、鞘から刃が出切るよりも早く、目の前の男たちの動きが止まった。
「!?」
ルイスも同じように剣を抜く手を止める。見ると、どの男も目の前の自分ではなくその更に後ろへと視線を向けていた。
「うぐぅっ・・・!?」
続けて背後から男のうめき声が聞こえ、ルイスは慌てて背後を振り仰ぐ。ルイスが目を向けた時には、こちらに背を向けて路地の入口に立っていた見張りの男が地面に倒れ込むところだった。
同じく異変に気がつき振り返っていたリリスが、そこに立つ姿を目にして、声を上げた。

「アデルさん!」

アデルはその声に、探し人が確かにそこにいることを確認する。
「リリス!無事か・・・っ!?」
走り寄ってくる新たな乱入者に周囲の男たちに動揺が広がり、当のリリスたちへの注意が逸れたのをルイスは見逃さなかった。
「リリスちゃん、そのまま走って!」
「!はい!」
リリスの背負うリュックを軽く押すようにして、瞬時にルイスが声を掛けた。リリスもそれに反応して、通りの方向へと走り出す。不意をつかれた男たちは、自分たちの間を2人がすり抜けて行くのを止めきれない。
「そいつらを逃がすな!!」
傷の男の罵声が飛ぶが、2人はそこを振り切っていた。
そして、男たちの囲いを突破して走ってきたリリスとその背を押すようにして駆けてきた男の姿に、アデルは目を見開く。

「ルイスっ!?なんでお前がここに!」
「やぁ!まさか、リリスちゃんの連れっていうのが、アデルだとは俺も驚いたよ。」
「えっ!?お二人は、お知り合いなのですか!?」

リリスがアデルとルイスの方を交互に見ながら驚きの声を上げるが、すぐ背後から男たちが追ってきている状況で、悠長に説明をしている暇はない。
ルイスはそのままリリスと共に、アデルとすれ違うようにして、その背後に身を隠した。
「アデルさん、あの人たちは私が追いかけた人の仲間みたいで・・・・」
「分かってる。」
「リリスちゃん、ここはアデルに任せて大丈夫だよ。」
見ると、ルイスはすでに剣の柄から手を離し、先程までの緊張感は完全に消失している。男たちが追ってくるのを、余裕の表情で見守っているような様子すらある。
「逃げない方がいいのか?」
「厄介なことに、リリスちゃんの身分証を向こうの男に盗られちゃっててね。」
ルイスがそう言うと、アデルは追ってくる男たちに向かって、半身を引いて構えをとった。
「一応聞いておくけど、剣とか使う?」
今思い出したかのようにして腰の剣に手を伸ばし、アデルに尋ねるルイスの声は、まるで食卓の端に置かれた調味料入れを持ち上げて「塩いる?」みたいな聞き方だった。

「不要だ。」

そう一言発したアデルは、吐き出した言葉と同時に、地面を蹴った。

リリスはそれを後に、“踊っているようだった”と例える。
追ってきた1人目の男の拳を避け、避けざまに右手で手刀を一発、首側面に叩き込む。続いて来た2人目はそのまま腹部に左手の拳を叩き込み、3人目のナイフの切っ先を下に避けると、その勢いのまま腕を取って背後に投げ飛ばした。ここまで、わずか5秒足らず。
残りの男たちが一瞬怯んで足を止めるのにも構わず、一息に距離を詰める。4人目の喉元に手を掛けると、そのまま引きずり倒すようにして、5人目へと投げつけた。路地壁面に勢い良くぶつかって、そのままズルズルと地面にへたりこむ。
残り3人となったところで、リーダー格であろう傷の男が、一歩後ろに身を引いた。
「おい!この男を早く止めろっ!!」
ここまでの動きを見ている第三者からしたら、「無茶な!」と思うようなことを叫ぶ男に、それでも逆らうことはできないのか、両側の2人が手に刃物を取り出して構える。
「こ、このぉぉおおおおおっ!!!」
勢いだけで前に飛び出してきた男に対して、アデルは身を翻すように刃の先を交わしながら、その勢いのまま、相手の脳天に向かって後ろ回し蹴りを繰り出した。
更にそのまま蹴り出した足で相手の身体を踏み台にして、左足を前に蹴り出し、呆然と立ち尽くしたもう1人の顔側面に蹴りを叩き入れると、その緩んだ手元から浮いたナイフを手に取る。
傷の男はそこまでの一連の動作を目にして、漸く自分が相対しているものが尋常ならざる事態だということに気がつき、慌てて路地奥へ逃げ出そうとするが、そうして身体の向きを変えたその時には、アデルはすでに男の背後に迫っていた。
男の首の後ろに手を掛け、前の地面に押し倒す。顎が直撃した男は、幸運にも舌を噛まなかったものの、ぶつかった衝撃がその痛みとともに顎から頭の上まで駆け抜ける感覚と眼球が激しく上下するのを感じ、次に揺れる視界が鮮明になると、自分の眼球スレスレのところにナイフの切っ先が迫っているという恐怖に「ひっ・・・!」と思わず、噛み締めた歯の奥から声を漏らした。瞼を閉じたら、その瞼が切れるのではないかという距離だ。

「彼女の身分証を返してもらおうか。」

最早、身分証のことなど男の頭の中から抜けて落ちてしまっていたが、ただただ食いしばった歯の奥から「はいっ・・・」と気の抜けたような声を発することしかできない。

ここまでの状況を見ていたリリスは、ぽかんと口を開けたまま、立ち尽くしていた。それこそ、ルイスに助けられた時以上の衝撃だ。
そんなリリスに、ルイスは慰めともつかない言葉を掛ける。
「接近戦で、アデルに敵うのは熊くらいだと思うよ。」
「そう、なんですか・・・」
リリスは頭の中で、熊と戦うアデルの姿を想像した。


To be continued.…


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10年振りくらいのサイト大改装

2019/01/13(Sun)16:09

こいつ、もう考えることを放棄しているんじゃないかなというか、半分くらい息がないんじゃないかって、きっと多方面から思われているのではないかという恐ろしい更新スピードの本サイトですが、サイト開設11年目にして、サイト全体のデザインを一新いたしました。(ここまで一息)

いつも、「この広告は、3ヶ月以上更新がないサイトに表示されます」っていう「おいおい、余計なお世話だぜ、ベイベー。私は、この3ヶ月間フツーにめっちゃ忙しかったりしたんだよ私生活において。ほっといてくれ。」って言いたくなるようなトップページの広告が出てから、ものごっつ久しぶりの日記更新をしている彩瀬です。(そろそろ息切れ)

こちらの創作サイトをはじめてから、恐ろしいことにもう11年が過ぎておりました。(白目)
というわけで、ここらでサイトの見た目から綺麗さっぱりと改装をいたしまして、更に創作系の古い物は一掃いたしました。(綺麗な笑顔)
二次創作目当てできていただいていた方々には、大変申し訳ないことの極みなのですが、とうとうメインで据えていたナルト小説も表からは消しまして、小説は現状、オリジナル長編の「Garden」一本になっております。
気の向くままに、短編とか、何かを急に書いたりすることもあるかと思いますが、いずれにせよのんびり続けていきますので、そこんとこよろしくお願いします。

ちなみに、いつかの日記に書いていた通り、Pixivの方に彩瀬名義でアカウントを持っておりまして、二次創作系は、今後そちらに投稿していきたいと思っている次第です。
ここにきて、ワンピースとかデュラとか、今まで誰に見せるでもなくこそこそ書き溜めていた小説とかをそっちに投稿していたり、「お前急にどうしたよ」って感じで、新しいのを書いたりして、また投稿したりしておりますので、そちらもちょいちょい覗いていただければと思います。
過去のサイト掲載していたものは、もしも気が向けば、気まぐれにそちらに上げることもあるかもしれませんが、・・・うーん、ない気もする。(どっち)

どうでもよいことですが、PICTも管理が楽になるようにTunblrとInstagramのアカウントをリンク表示させるという小狡いやり方にしておりますが、あしからず。
これで、少しでも創作を積極的にやっていくようになれば万々歳なのですが、どうかなあ。。。

そして、日記の方でも、二次創作系の小説については削除していこうかと思います。
が、その他、私の11年前から続く恥ずかしい文面の数々は残しておきますので、たまに覗いて、「こいつヤバイ奴だな」って思ってもらえれば私はハッピーです。

新しいサイトデザインは、前のデザインテンプレートを使わせていただいていたところと同じところからいただいたものなのですが、一応、リンクはつけているものの、実はそのサイト様自体はすでに閉鎖しておりまして。。。
しかし、そこのデザインテンプレートが大変気に入っていたため、サイトご存命時にそのサイトからめぼしいテンプレートをダウンロードさせていただいており、またしても使わせていただいてます。
このテンプレートを作った方に、もしも一生のうちで再び巡り会える機会があるのなら、心の底から「大好きです」と伝えたいとしがないいちサイト管理人が言っていたことをどなたが伝えてください。(え)
SNSやらなんやらが台頭した、このHP氷河期にサーバーを続けてくださっている忍者さんにも感謝しかないと感じる今日この頃です。(しみじみ)

今年は、思い切って憧れのグッズとか、小説の実本化とかそういうことができたらいいなあなんて、夢のようなことも考えているので、もしもこのサイトを見ているどこかの心優しい人がいるのであれば、「コイツの言ってること、いつも適当だしな」と半分以上聞き流しながら、楽しみに待っていて頂けると、嬉しいです。

と、急に長文でしゃべり出したりする管理適当な管理人ですが、今後共よろしくお願いしまっす!

No.530|出来事Comment(0)Trackback